フレームワークの続き

一般 kilica 2008/8/26
TRPG Search のフォーラムでやります。

TRPGのフレームワーク

一般 kilica 2008/8/19
Rauru Blog「RPG とフレームワーク」を読んで考えてみました。いや、途中で詰まっちゃったんですが。

そもそもフレームワークってどんなの?

まずは話の整理から。 タイトルにも含まれている「フレームワーク」ですが、枠組みとか構造といった意味の単語ですが、ここではプログラミングの世界で使われる「フレームワーク」を指しています。 Wikipedia で調べても、いまいち分かりにくい説明が付されていますが、プログラミングを楽にするためのコードの集まり、くらいにとりあえず理解しておいてください。フレームワークを利用することで枠組みが決まるので、プログラマは枠の中を埋めればいいだけになり、見通しが良くなったり、他人の書いたコードでも理解しやすくなるといたメリットがあります。 framework 図で表すと右のような感じです。 青い矢印がフレームワークで、フレームワークが各処理を適切なタイミングで呼び出して次々実行しています。プログラマは、アプリケーションごとに、角丸の四角内の処理を差し替えてアプリケーションを作るのです。 え、何がうれしいのか分からない? フレームワークがない頃は、「データベースからの読み込み」の後に「フォームの表示」処理を呼び出して、といった流れをそれぞれのプログラマが記述していました。その順番などがプログラマによって違っているので読んでいるコードが何の処理なのか分かりづらかったり、プログラマによっては面倒くさいから「値の検証」処理(無くても動くことは動く)をすっ飛ばしたりして品質もまちまちでした。 フレームワークを使うと、処理の大きな流れはフレームワークが制御してくれますし、「これだけ記述しなさい」という「プログラマが書くべき処理」を指定してくれるので、比較的均質な品質のプログラムが書けるのです。 同じようにTRPGのシナリオも、何もないところから作り始めると大変で、特にはじめたばかりの段階では途方に暮れてしまいます。あるいは、何とか作ってみたけど、お手本にしたリプレイのように面白くならなかったり。 そこで、TRPG にもフレームワークを導入するのが良いのではないか、というのが元記事の主旨です。

ストーリィのフレームワークとゲームのフレームワーク

ストーリィのframework さて、元記事へのブックマークコメントを見ると、「今ではNOVAやエンゼルギア、シナリオクラフトがあるぞ」という意見が見られます。それに対し、「NOVAやエンゼルギアはフレームワークではなく個別部品ライブラリだ」と補足されています。 じゃあ「シナリオクラフトは?」というと、これは「ストーリィのためのフレームワーク」と呼べるだろうと僕は思います。何らかのイベントが起きることは決まっていて、その具体的な中身は差し替え可能(ランダムチャートを振って決める)になっているのはフレームワーク的と言えます。 が、元記事で言及されているフレームワークは「ゲームのためのフレームワーク」であり、シナリオクラフトで提供されている機能とは別のものを求めています。

ゲームのためのフレームワーク

じゃあ「ゲームのためのフレームワーク」とは何か? というと、元記事でも書かれているようによく分かりません(^ ^; 「ゲームマスターもハリウッドの原則に従ってルールフレームワークから呼び出される」とか、まぢ?ってかんじです。 というと終わってしまいますので、幾つか言及されている手がかりからフレームワーク実現の可能性を考えてみたいと思います。 まず、フレームワークが必要とされるのは、「リソース管理とかの戦略的面白さまで織り込んだ全体図を描」けるようにするためです。フレームワークで要求されるところだけを定型的に作れば、自然とゲーム性の高いセッションが実現できる、そんなものが出来ればいいわけです。 さて、ここでTRPGからちょっと離れて、高いゲーム性を備えているボードゲームで考えて見ましょう。 ボードゲームは一般に、盤面全体を見渡すことができ、何回かプレイすればどのタイミングでリソースをつぎ込むべきか、どのタイミングでどれだけの差があるともう逆転できなくなるか、といったことが大雑把に把握できてきます。 そのため、初期状態で戦略を定め、ゲームが進むうちにライバルとの差を見ながら戦略を修正したりして勝負どころを見極めながらトップを目指します。 ところが、TRPG では様相が異なります。まず、TRPGではシナリオは基本的に何回も遊ぶものではありません。それから、多くのセッションでは、プレイヤたちは盤面全体を見渡すようにシナリオを見渡すことは出来ません。見えない部分がほとんどで、どこでどれだけのリソースをつぎ込むかは、ほとんどギャンブルです。「会場が閉まるまでまだ3時間あるから、リソースとっといたほうがいいかな」といったメタゲームに頼りがち。 ダンジョンの中では光が届くより先は見えませんし、クトゥルフなどの謎解きシナリオでは「謎」を魅力的にするため、徐々に徐々に真相は明らかになっていくものであり、最初から全体が見通せるなんてもってのほかです。 つまり、ボードゲームのようなゲーム性を持とうとすると、ダンジョンのマップと敵の戦力は全部、とは言わないまでも半部以上明らかになっている、謎も明らかになっている、といったシナリオが必要になります(僕は時々やる)。 ちなみにTRPGのシナリオがこういう風になっているのには理由があって、ボードゲームでは展開の多様性を対戦相手のプレイヤが保障しているのに対し、TRPGは(PARANOIAなどの一部の例外を除き)協調型ゲームなので、シナリオで保障しなければならないからです。 以上の考察より、ゲームのためのフレームワークが機能するには、そもそも情報開示度の高いシナリオという環境が必要ではないかと考えます。 ここから先はまだぐだぐだ。 むかし『TRPGシナリオ作成の道具箱』というシナリオの部品ライブラリを作りました。 このライブラリの中からシーンをピックアップし、制限と課題というプロパティを決めるとそれなりのゲーム性を持ったシナリオが出来る、というものですが、全シーンで制限を共通して持たせると、フレームワーク的なものが出来ないかなあ……。シーン1,2,3で合わせて「5日間」という「時間の制限」があって、……うーん、おぼろげなイメージしか浮かばないけど。 もうひとつの可能性としては、シナリオ単位で使えるフレームワークは諦めて、キャンペーン単位でフレームワークを作ろう、というものが頭にあります。もうちょっとしっかり説明できるようになりましたらまたいずれ。

フェイト/ゼロとバトルロイアルなキャンペーン

一般 kilica 2008/1/6
『フェイト/ゼロ(4)』読み終わりました。 「並ばずに買えます」という呼び込みにつられて会場で買ってきたものです(コミケレポートは書いたんだけど誤ってバックスペースを押して消してしまった orz というわけで今回は無し)。 もう少し寝かせておくつもりだったのですが、今日、年末に買ったディスプレイを設置していたら腰を痛めて午後から横になって暇だったのでちょっと読み始めたら最後まで……。サーバント戦はあっさりでしたね。 なお時間が余っていて、ユリイカで特集されていたのと同人誌(旅行関係)で度々JOJOが小ネタに使われていたのを読んでJOJO読みたい病に罹って第2部を読み直していました。 ** さて、フェイトのようなバトルロイアル物を読むとキャンペーンでやってみたいなあ?という思いが沸いてきます。 正確に言うと、どの勢力と組むか、どの課題から先に手を付けるか、どの問題を優先するか、どんなリスクを犯し、どんなリスクを避けるか、といった戦略レベルの判断をパーティが下していくようなキャンペーンです。 まともに処理すると、上手い戦略をとった場合に実際のセッションが簡単すぎてしまったり、反対に下手な戦略を取ったときに実際のセッションが達成不可能なレベルになってしまったり、マスタの準備が大変だったりでなかなか踏み込めません。

ドラマチックなシナリオ

一般 kilica 2007/9/30
ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む
[trpg][miscellanea]F.E.A.R.の良さ
TRPGのシナリオをドラマチックにしよう!っていうのは10年以上前から言われていた話で、僕が持っていたシナリオ作成のための参考書*2にも載っていました。載ってはいましたが、僕には全然使いこなせませんでした。今読んで、初めて使ってみる気になります。この本の内容の一部分を紹介してみます。
    対立の構図

    ドラマチックなシナリオには”対立”が必要
    2極関係

       1. 2極対立
       2. 2極競合

    3角関係

       1. ジレンマパターン1(協調+協調+対立)
              * PCと協力者A,Bがいて協力者どうしで対立している
       2. ジレンマパターン2(協調+対立+協調)
              * PCと対立者に対してどちらとも友好的なく協調者がいる
       3. 勧善懲悪パターン(協調+対立+対立)
              * PCと協調者に対してどちらにとも対立する対立者がいる
       4. 混戦パターン(対立+対立+対立)
              * PCに対立者が二組いてその組どうしも対立している
       5. 2極競合バリエーション(対立+対立+競合)
       6. 三つどもえパターン(競合+競合+競合)
以前どこかで,状態Aから状態Bに移り変わるとき,その落差こそがドラマだというような説明を読んで,これがどのくらいドラマについての一般的な見解なのか分かりませんが,個人的には非常に納得がいきました。 上の本の引用部分では静的な状態が挙げられており,これはストレスのかかった状態ではありますが,これだけではドラマチックとはちょっと違うのかなあと。 ドラマの例としてはたとえば,
  • 敵対していた強力な人物が何かのきっかけで味方に付く
  • 信頼していた味方が敵方に寝返る
  • 劣勢で全滅しかかっている状態から逆転勝利を収める
  • 初めはみんな無関心だったが,最後はみんなが協力してくれている
などなど。

出来すぎたRPG

一般 kilica 2007/9/26
最近,『ウォーハンマー』のルールブックを読んでいるんですが,これが面白くて,わくわくしてきます。 こうした感覚は,D&D(ここでは 3.5 版)関係のルールブックを読んでいるときにはあまり沸いてきません。なんでかな〜とぼんやり考えていたのですが,たぶん D&D はあまりにフォーマットがしっかりしすぎているんだろうなあと思い当たりました。 ウォーハンマーの場合は,僕の知識が浅いこともあってまだ「何があってもおかしくない」という感覚があります。例えば,入門シナリオでいきなり「この人,特別だから能力使ってもそれと分からないよ〜」ってなルール破りが書かれていたりします。 ルールもがちがちではないので,幾らでも例外がありうると「予感」させます。実際にはそんなこと起こらないにしても,「ひょっとしたらありうるんじゃないか」と想像させる余地があります。 一方 D&D の方は赤箱の頃からのつきあいでよく知っているし,何より 3版/3.5版はルールの整備が行き届き,体系だった作りになっているせいで,逆に「わくわく感」は削がれてしまっています。 それは知っているモンスター,知っている呪文,知っている特技,というにとどまらず,たとえ知らないモンスター,知らない呪文であっても,既存のモンスター,呪文,特技の枠の中には収まっているはず,という妙な安心感に結びついています。 そしてさらに悲劇的なのは,その枠からはみ出る存在は「なんだそれは!」という驚きに繋がるのではなく,「なんだその狡モンスターは!」という,バランスの悪さとかルールの不出来として捉えられてしまう点でしょう。 ゲームの出来としては D&D の方が圧倒的に上だと思うし,どっちか選べと言われたらやっぱり D&D なんだけど,RPG として大切なものを失いつつあるような気がします。 「どきどきわくわく」できるゲームってロールプレイングゲームくらいですから。

[同人誌] 『此花咲哉』

一般 kilica 2007/9/23
【タイトル】 此花咲哉 【サークル/執筆者】 儀式回路 【発行時期】2007夏 【URL】 http://g-kairo.sakura.ne.jp / http://gkairo.exblog.jp/ 【評価】★★★★★ 【紹介者】 氷川 霧霞 【紹介内容】 夏コミの同人誌でもっとも気になっていた『此花咲哉』を読み始めました。まだ読みかけ。 「TRPGでギャルゲを遊ぶ」というテーマで作られたキャンペーンシナリオで,システムは『魔獣の絆』(旧約)を想定しています。 以下では主に,『此花咲哉』で試みられているシステム的な部分に注目してレビューしていこうと思います。 手にしてまず感じるのが,書籍としてのレベルの高さで,まあハードカバーの一般書籍や,前ページフルカラーなんてほんと比べると流石に勝てませんが,オフセット2分冊で,『トーグ』のように箱に2冊入っていて目をひきます……といっても分かる人は少なくなってきてますかね。専門書やDVDのボックスみたいな「箱」です。 200ページ以上のシナリオ本体と,100ページを超すリプレイからなるヴォリュームたっぷりの作品です。 次に肝心の中身の紹介と行きます。 まず一つめの特徴は,シナリオ本体の記述で,シナリオを構成する最小単位である「イベント」が延々書き連ねてあります。 この「イベント」がいくつか合わさっていわゆる「シーン」をなすのですが,具体的にどのようなシーンがあって,その中でどのようなイベントが発生するかはプレイするマスタに委ねられています。ここが,この作品のもっともユニークな部分と言えましょう。 実に200以上のイベントが用意されており,この量も圧巻ですが,そのままでは「イベントを組み合わせてシーンを作れ」と言われてもマスタはとまどうだけでしょうから,いくつかの工夫がなされています。 まずイベントは,ルート(ギャルげーで良くあるやつですね。この作品の中では「イベントクラスター」と呼んでいます)によって分けられています。 そして,各イベントには「レベル」が設定されており,起こす順番が大まかに示されています。1レベルのイベントがだいたい(目安として50-80%)終わったら,2レベルのイベントが発生する,という具合です。 このレベル間のイベントの結びつき(フラグ条件)は,比較的大まかで,イベントクラスターごとに2,3に分かれている程度です。 シーンとイベント また,イベントの組み立て方については,付属のリプレイが大いに参考になるでしょう。 二つめの特徴が,TIPS と呼ばれるプレイヤに渡される情報の断片の存在です。 特に情報収集に関するイベントをこなしたときに渡すように指示がありますが,TIPSは ルートごとに分かれているだけで,どの TIPS をプレイヤに渡すかは適当です。 つまり情報の断片をつなぎ合わせて真相に近づいていく,という趣向で,『深淵』の「夢歩き」に似ているかと思います。 とりあえず読んだところではここまでです。

「情報収集の役割」にリプライ・・・できん

一般 kilica 2007/9/19
http://simizuna.exblog.jp/7463082/#7463082_1 紙魚砂さんが何か書いてくれていたのを朝見かけて,帰ったらリプライしようかと思ったのですが,よく読んでみたら理解できんかった(^ ^;) 各段落の1行目は理解出来るんだけど,2行目からはもう置いてけぼりです(笑)。 まあそれほど重要なことも書かかれていないようなのでパスと言うことで。

ゲームデザイン方法論の是非

一般 kilica 2007/9/15
だいぶん乗り遅れています。 下記リンク先の水無月冬弥さんが,高橋さん(gginc)の記事に少々いらだっているように見えて(関連記事のコメントを読むと特に),どうもその理由がよく分からないので書こうかどうしようか迷ったのですが。 大元の記事
GOD AND GOLEM, Inc. -annex A-
〈ゲームトークン〉の死と、システムレベルの〈目標〉デザイン(前編)
水無月さんの記事
TRPGと現代ファンタジーを愛する男のブログ
愛と気合でTRPG作成
 ううん、まったく意味がわからないんですけど、みなさんはどうなんでしょう?  僕は同人TRPGの作成者で基本的に一人でシステム構築するので、世間と違うだけなのかもしれませんが、こんな小難しいこと考えてプロの方はTRPGを作っているんでしょうか?
「絵の描き方」「作曲の仕方」「小説の書き方」といった創作活動での方法論があるように,TRPG システム作成において「TRPG システムの作り方」があっても別に不思議ではないと思います。マイナな分野なのでほとんど見かけませんが,「ゲーム」まで範囲を広げれば,最近書店でも何冊か見かけるようになりました。 それはそれとして,一般的に「先に方法論があって素晴らしい作品が出てくる」のではなく,「先に素晴らしい作品があって,それを分析して方法論が作られる」という順番だと思うので,「小難しいこと」を考えずにTRPGシステムを作るというのは別に間違った態度ではないと思います。 では創作に関する方法論が無意味かというとそうではなく,アイディアが沸こうが沸くまいがとにかく作らなくちゃならないプロの方にとっては便利なものだろうと思います。また反対に「駄作を作らないようにするには何に気をつけなければならないか」という方法論も重宝するでしょう。 プロであればなおさら,こういったことを自分で考えるなり,「これは!」と思ったものを読んで勉強するなり,しているんじゃないでしょうか(していて欲しいなあ)。 (「こんな小難しいこと考えてプロの方はTRPGを作っているんでしょうか?」って言うのは,結構失礼な気も) また,TRPG の場合はシナリオ作成という形でゲームをデザインしなければなりませんので,プロでもないし独創的なシナリオを作りたいわけでもなくって,単に来週セッションがあるからシナリオ作らなきゃならない,ってマスタにとっても,一定の手順で面白いものが作れる方法論があるならありがたいと思います(高橋さんの例の記事が役に立つかどうかは別問題で,一般論として)。

「シナリオの狙いとデザイン」追加

一般 kilica 2007/9/15
研究室に新記事「シナリオの狙いとデザイン」を追加しました。1年以上ぶり。 元々 GW の頃に書いたのですが,サイトのリニューアルをしてから掲載しようと思っていたら半年も延びました。 内容はとても基本的なことですが,僕がその重要性を本当に悟ったのはつい最近でした(^ ^;)。nacky7 さんとペアシナリオメイキングに挑戦したときです。 そのとき,「ああ,こういった内容のことも書いておいた方が良いなあ」と思ったのですが,それからもう2年以上経過していますね……。

シナリオ作成における「情報収集」の役割

一般 kilica 2007/9/12
Accelerator さんのコメントより。 > 情報収集そのものをゲームとする方法論が抽象的に説明され、もっといろいろな > 具体例をもって整理されたらいいなぁと思っています。 ということで、とりあえず現時点で思いついたことを書きます。まだあまりまとまっていないのと、「情報収集そのものをゲームとする」部分の説明が不足しているのですが。

「情報収集」の役割による分類

一口に「情報収集」といっても、「シナリオにおいてどのような役割を担っているか」という切り口で見ると数種類に分かれる。しかし、シナリオ作成においてこの違いはあまり意識されず、一緒くたに「情報収集」として扱われているように感じる。 そこでまず、この切り口で情報収集を分類し、整理してみよう。
ストーリィの一部
シナリオ目標の提示 → 目標達成に必要な情報収集 → 対決 のように、ストーリィの一部としてシナリオに組み込まれるケース。「対決」に持ち込むために「敵の正体を探る」「敵の居場所を探る」「悪事の証拠をつかむ」といった情報収集が必要となるなど。 コンピュータRPGでは手っ取り早くボリュームを水増しするためにこの手の情報収集が多い(「○×村の誰某がその事を知っているので聞いて来い」とか)が、単純にこの役割しか持たない情報収集はTRPGでは不要というのが個人的な意見。そのような情報は最初からPCは与えられている、で問題ない。
ストーリィの要請
情報収集自体は実はどうでもよく、情報収集を行うことによって引き起こされる「事」が重要なケース。 あるNPCを強く印象付けるために重要な情報を知っていることにして、パーティにその人物と接触させる、情報収集に赴いた場所で(情報収集とは関係ない)事件が起きて巻き込まれる、など。 言うまでも無いが、このような情報収集はゲームではない。 「ゲームではない」のが即イケナイわけではもちろん無く、ゲームとは別の方法論が必要とされる、ということ。とりあえずここでは扱わない。
プレイヤの発想力のテスト
どこで情報を集めるか、どうやって集めるかなどをプレイヤに発想させて楽しませる役割をもった情報収集。 場所であれば「酒場で」「図書館で」「専門家を訪ねて」、人であれば「裏路地の乞食に」「口の軽そうな使用人に」、方法であれば「銀貨5枚を握らせて」「酒をおごりながら」「脅すような口調で」など、状況に対して適切と思われる行動をプレイヤが発想できるかどうかを試す。 これは、TRPG のシナリオではよく見られるが、実のところ「ゲーム」ではない。 発想できなかった場合にシナリオがどん詰まりになる危険性をはらむし、一度発想できてしまったプレイヤにとっては以降は同じ課題が単なる作業になりがちなので扱いが難しい。個人的には避けたほうがよいと思う。
ゲームの一部
ゲームの一部としてシナリオに組み込むケース。 リソース(経費や時間など)をどれだけ費やすかを判断させる、情報収集によって発生する危険(たとえばマフィアのボスについて調査するのはかなり危険だろう)をどこまで冒すかを判断させる、などによって情報収集をゲームの一部としてシナリオに組み込むことができる。

キーワードリンク方式の情報収集

キーワードリンク方式では、上記の「プレイヤの発想力のテスト」という情報収集の在りようを否定している。「どうやって」「どこで」「誰に」といった中間をすっ飛ばして、結果が得られるのがキーワードリンク方式である。 キーワードリンク方式を「いいな」と思ったのはまさにこの点で、「プレイヤの発想力のテスト」で挙げたような危険性を排除できる。僕も排除したいと思っていたが、キーワードリンクほどドラスティックに発想できなかった。 ただ、その点はよいが、単に「ストーリィの一部」として芋づる式にキーワードを追いかけるだけだと、一見調子よくシナリオが動いているようにみえるが単なる作業であり個人的にはすぐに退屈になる(Accelerator さんの記事の「キーワードを片っ端から全部調べるのが最適解」との指摘のとおり)。 キーワードリンク方式の情報収集を「ゲームの一部」にするのは簡単で、Accelerator さんが書いているようにたとえば時間の制限をつければよい。キーワードは5つ出てきたが3つしか調べる時間が無い、どれを調べよう、とプレイヤに考えさせる。 もしくは、「調べるといかにもやばそうなキーワード」を調べるかどうか、判断させることで「ゲームの一部」として情報収集をシナリオに組み込むことができる。 キーワードリンクについてはこちらを参照。
ブレーキをかけながらアクセルを踏む
「[trpg] シティアドヴェンチャーの作り方」

キーワードリンクによる情報収集

一般 kilica 2007/9/9
ブレーキをかけながらアクセルを踏む
「[trpg] シティアドヴェンチャーの作り方」
今更ですが,面白かった記事です。 なるほどね,FEAR 系の情報収集の基本的な考え方はこんな感じなのか〜と思いました。シンプルで使いやすそうです。 T系ウェブラジオは,わりと聞いていらっしゃる方がいるんですね。なかなか面白いですよ。 ** 情報収集や交渉で困るのは,行動宣言の粒度がはっきり決められていないことが多い,ということです。 情報収集を例に出せば,
  • ○○について調べる
  • ○○について××技能で調べる
  • ○○について××技能を使って△△(場所)で調べる
  • ○○について××技能を使って△△(場所)で□□な感じ(目立たないように,急いでetc.)で調べる
というように,どこまで詳細に行動宣言をするべきか,の判断がマスタにゆだねられています。これが参加者によってまちまちなので,余計なところに手間がかかります。 マスタの基準の方が細かい場合はまだ良くって,「○○について調べる」と宣言があったときに「どこで調べるの? 誰に話しかける? 君の持っている情報はどこまで伝えるの?」といった,「マスタが必要と考える行動宣言のレベル」を伝えてくれるでしょう。 でもマスタの基準の方が大雑把な場合,次のようなケースが考えられます。 プレイヤ:「マスタ,酒場で○○について調べるよ」 マスタ:「ええっと,うーん,分からなかったよ(あーあ,○○について調べる,だけで良かったのに。情報は市場のおじさんが知っているので,酒場では手に入らないんだよなあ)」 この辺りの指針と,情報収集をシナリオに組み込む場合どういう位置づけで組み込むべきか,が示唆されているといいですね。

「TRPGのススメ?」と記事を書くことについて

一般 kilica 2007/5/9
ちょっと長くなりそうなのでトラックバックを飛ばすことに。でも最近,上手く飛んでいないような。 TRPGのススメ? 「批判が快感になれば本物だ。」 僕のサイトは年季だけは入っていますが大したことを書いていないし,特に最近はろくな事を書いていないので,罵詈雑言を目にすることもほとんどありません。 昔は,自分に対する非難を目にすると「なんだ,こいつは,なにもわかってないくせに,くそ,頭悪いな,くそっ」(笑)とか思って感情を高ぶらせていましたが,数年前から「なんだ,こいつはっ……でも相手をしている時間が勿体ないから次のお便り行きましょう」と避わせるようになり,最近は都合の悪い部分の文字色を脳内で#ffffffに換えてしまい,「ここは確かにそうかも」と役立つ部分だけ,参考になる部分だけを抜き出して読めるようになりました。 この類の能力の獲得は,中日が負けた試合を一瞬で忘れられるようになったのと時期を同じくしているような気がします。 同「ウォッチングスレの影響力の考察。」 こちらは3月頃のエントリィ。コメントしようと思っていたのですが,当時はそれどころではなかった。 昔はなるべく多くの人に読んでもらって賛同を得たいなあと思って記事を書いていたのですが,最近は90人に賛同されなくても,10人に「この記事は良かった」「今まで気づかなかったことに気づいた」と思ってもらえればいいかなあと考えながら書いています。 もしくは,その記事を書くことで得られること,もしくは記事に対するコメントの中から何か得られるものがあれば良いなあと思って書いています。 記事に対して賛同しない人が居るのはもうどうしようもないことで(そしてそういう人ほど声が大きいのもどうしようもない),あまりそういう人と「正しさ」を競おうという気はなくなりました。 ここでもやっぱりマイナスの評価は数えずに,「少数でも良いから誰かに影響を与えられたか」「自分に何か得るところがあるか」を基準に評価しています。

『赤い手は滅びのしるし』

一般 kilica 2007/5/1
D&D3.5 用の5-10レベル向け(キャンペーン)シナリオ。とうとうシナリオまで全ページフルカラーです。シナリオフルカラーって思ったより良くって,ワールドガイドの次くらいに効果があるんじゃないでしょうか。カラーのイラストを見ていると遊んでみたくなってきます。 さて,肝心の中身ですが,これは良いです。 どこが良いかって自分でもよく分かっていないのですが,
  • まず,シナリオ全体の見通しが良い。本書の頭に,シナリオの章ごとの大まかな概略があり,タイムラインがあり,登場する各場所の紹介があり,登場人物の一覧がある。このおかげで,シナリオの全体像がすんなり頭に入り,大いにシナリオ本編を読む助けになっている。
  • ゲーム性が高い。単に敵を倒してめでたし,というわけでなく,いくつかの小さなミッションをどれだけこなしたかによって成功の度合いが変わってくるようになっている。
  • 個々のミッション成功とシナリオ全体の成功との結びつきが密。個々のミッションが,敵を殲滅して戦力をそいだ,というだけのものに止まらず,その結果敵軍団を数日に渡って足止めしたり,中立勢力を味方に付けたり,敵勢力の一部を離反させたりと,PCが倒した敵の数以上の効果をシナリオに及ぼせるような作りになっている
  • 標準ではパーティは雇われの立場で,ともすれば「命令されたとおりに動きます」といった感じの受け身の立場になりがちだが,雇い主達はお互い意見が異なり,それぞれの立場から怪しげな主張をするので言いなりになっているとパーティは成果の乏しい命令を受けかねない。そのため自分たちで状況を分析し主体性を持って主張を通す必要がある(場面がある)。
といったあたりで,総じて,シナリオ全体の流れの中に,一つ一つのエンカウンタが位置づけられきちんとデザインされていると感じます(気に入らないシナリオは「こんなの入れると面白くない?」と制作者の思いつきでなんとなく入っているエンカウンタやイベントが多い)。 red hand 表紙のタイトル『赤い手は滅びのしるし』の『手』の文字のところに敵のシンボルマークの赤い手が重ねてあるんですが,妙にマッチしています。漢字ならではでしょう。
赤い手は滅びのしるし
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about ”カサンドラであって欲しいD16の”

一般 kilica 2007/4/25
カサンドラであって欲しいD16の意見 シナリオの重要性について説いたD16さんの力作。 僕個人は,シナリオ,とりわけ D&D のオフィシャルシナリオで「これは凄い」と思った経験が無い(別の意味で「凄い」と思ったのはある。Earthshaker とか)ので,完全にはうなずけないのですが,D&D3.5版用のシナリオが出ていないのは弱点の一つだと思っていました。 Rune Quest, クトゥルフ,深淵あたりでは,「うお,これは凄い。とても自分では作れないなあ」というのが,同人誌を中心に結構あります。 ただ,僕はシナリオの狙いを正しく読み取る能力があまり無いようなので,過小評価する傾向にあると自身では思っています。 でもって僕が何とかしなきゃいかんのじゃないかと思うのは,その敷居の高さ。値段は高いし,その高価なサプリメントが山のように出ていて今更近寄りがたいし,ルールは多い。 値段が高いのは今更どうしようもないでしょうから,せめて「高いけどめちゃくちゃ面白そうだ」と思ってもらえないといけないのですが,そう思わせる機会って今でも十分あるんでしょうか。僕自身はいま遊んでいるメンバがいなかったら,「こりゃ凄い」と思うこともなく過ぎていった可能性が高く,それを考えると全然不足していると思っています。 2,3時間で手頃に体験してもらう,っていうのであれば,(赤本じゃない方の)ベーシックセットや「シーン独立型セッション」で提唱しているような,シナリオ=1部屋で成り立つようなのが良いんではないでしょうか。D&D ならそれだけでも「またやりたい」と思わせる魅力を持っていると思うので。 ところで……カサンドラってなに?

about "TRPGは本当に復活したのか?"

一般 kilica 2007/1/13
TRPGは本当に復活したのか? ?コミケにおけるTRPGサークルの分析レポート? Decrease of TRPG Circles Attending Comiket Re: Decrease of TRPG Circles Attending Comiket プレイ人口の減少 一番上はコミケにおける TRPG サークルの申込数,参加数の変動などの定量的なデータを使って TRPG 界の盛衰を論じたレポート。その下は,それに対する感想へのリンクです。 読んですぐに何か書こうかと思いましたが,疲れていて過度に批判的になりそうだったのと,ディスプレイを見つめているのが辛かったので後回しに。 宮本さんが書かれているとおりの労作で,こういった定量的なデータを元にした分析はあまり存在していないので貴重です。 一方で,そのデータをどう解釈するかについては僕は違った意見を持っています。 僕も,ここ10年以上,夏冬のコミケには遅刻もせずに参加しており,TRPG 関係の日には入場後,一番に買いに行っています。 僕が見る対象は海外のRPGが中心で,元のレポートで挙げられているようなソードワールド,アリアンロッド,NOVAなどの国産RPGの同人誌は素通りなのでそのあたりにも差があるとは思いますが。 コミケで TRPG 関係の同人誌を出す動機としては,
  1. オフィシャルの展開で不足している分を同人誌で補完するため
  2. 「自分の思いついたアイディアを形にして人に見せたい」といった創作的な動機のため
ってあたりが思い当たるんですが,海外 RPG 関係の同人誌(僕がよく買う)では(1)のケースが多く,未訳 RPG,未訳サプリメントの翻訳本などがこの典型。また国産ものでも,公式ではリプレイしか出ないとか,○○方面のサポートが弱いとなると,これを補うような同人誌が出ることがあります。 このケースでは,当然ながら公式の展開が充実してくると消えていきます。僕が見たケースは,Vampire, Werewolf などの White Wolf 社の一連の作品で,日本語版が発売される前はこれらを扱うサークルをよく見かけたのですが,日本語版発売以降はばったり見なくなりました。 つまり,商業的に「冬の時代」にこそ,同人活動が活発になる傾向もある,と僕は考えています。 (2)はオリジナル RPG やリプレイなんかがその典型ですが,リプレイの同人誌はほぼスルーなので実感としてさっぱり分かりません(オリジナル RPG は昔っからあまり変わっていないような気がする)。 レポートの筆者が挙げているソードワールド,アリアンロッド,NOVAあたりは特にリプレイが多い RPG という漠然とした印象があるんですが,もしそうだとして,それらが減っているとすると,問題は「RPG が衰退した」直接の結果として「コミケ参加サークルが減った」のではなく,「リプレイを残すという文化が廃れてきた」その結果として「コミケ参加サークルが減った」という現象が見られるのではないでしょうか。

[同人誌] ウィッチクエスト シナリオガイド

一般 kilica 2007/1/4
【タイトル】 ウィッチクエスト シナリオガイド(1)?(4) 【サークル/執筆者】 魔女の会 【発行時期】(1)2002冬/(2)2003冬/(3)2004冬/(4)2005夏 【URL】 http://www.incl.ne.jp/south/ 【評価】★★★ 【紹介者】 氷川 霧霞 【紹介内容】 『ウィッチクエスト』のシナリオの作り方と,実際のシナリオが載っています。 このRPGは,僕にとってかなり理解困難です。どんなシナリオを作ればプレイヤが楽しんでくれるのか,想像できません。というわけで,この本を購入。 「なるほど,こうすれば面白そうなWQのシナリオになるなあ」というところまでは行きませんでしたが,いろいろ示唆に富んだ内容ではありました。 たぶん,WQの典型的なシナリオというのは「困っている他者からの依頼を未熟な魔法を使って何とかこなし,助けてあげる」といったものだと思いますが,もっと魔女自身に焦点を当てて「最初は知らなかったり仲の悪かったりする周りの人と仲良くなっていく」といったシナリオの方が僕個人としてはやりやすそうかなあ,と考えたりしました。 おなじく「魔女の会」(&TOKENEKO堂)で売っていた『TRPGとエブリディ・マジック』で紹介されている開発中のTRPG『マジカル・アベニュー』は,WQ風の世界観で,魔法のお店を経営するゲームになるそうですが,こっちの方が僕には遊びやすそう。 【タイトル】 『TRPGとエブリディ・マジック』 【サークル/執筆者】 魔女の会&TOKENEKO堂 【発行時期】2006 【URL】 http://www.incl.ne.jp/south/ 【評価】★★★

about "セッションについて(9)"(煮え系?)

一般 kilica 2006/9/25
「TRPG履歴」さんの「セッションについて(9)」の考察が気になりました。ここの主張は頷ける部分が多いのですが,眠くて頭が回りません(^ ^;) というわけでリンクのみ。 「ジレンマ」と「ロールプレイ」のどっちを重視するか,という話題です。

シティアドベンチャの面白さ

一般 kilica 2006/9/10
昨日はD&D3.5のキャンペーン第三回でした。 プレイヤサイドから見るとどうもうまく回っていなくて不満の出るシナリオだったのですが,それについてプレイ後の食事の時に出た話も交えて,「シティアドベンチャ,特に情報収集は楽しいか?」について書いてみます。あまり時間がないのでまとまりのない文章になりそうですが。 今回のセッションは,シティアドベンチャでよく見られると思われる一類型で,抽象化すると以下のような感じ。
  1. 依頼に基づいて情報を集める
  2. 集まった情報に基づいて推理し,さらに深掘りして情報を集める,または裏付けとなる情報を集める
  3. 集まった情報・証拠を基に解決に向けて行動する
今回は 1. の段階で躓いていたので論外なのですが,仮に1?3の段階がスムースに流れていったとします。 このシナリオはどこが面白いのでしょうか(表現が下手で申し訳ないですが,否定的な意味はありません)。 僕の体験および他人の感想などから,僕自身は以下のような点が「楽しい」部分なんだろう考えています。
  1. 聞き込みをしたり文書を調べることで情報を集めることそのものが楽しい
  2. 情報を集める過程でNPCやPCと掛け合いをするキャラクタプレイが楽しい
  3. 情報が集まるにつれ,最初は無関係と思われていたことが繋がったり,バラバラだった情報が形をなしてくる,その様相の変化が楽しい
1.は,このエントリィの主題になるのですが,僕は単なる作業でしかない,と思っています。 町の人に聞き込みをしたり失踪者の日記を調べるのはリプレイやコンピュータRPGでよく出てくるシナリオの要素であり,お手本は豊富にありますし,自分がシナリオを作る上でも比較的簡単にヴォリュームを増やせるので多用されているんだと思いますが,いろいろ検討した上で,シティアドベンチャは情報収集そのもの,つまりどこで,だれから,どんな順番で,どんな情報を聞き出すか,そのこと自体が面白い,と結論を出したプレイヤってどれくらいいるんでしょうか。 TRPGをはじめて,特にシティアドベンチャをやるようになってしばらくの間は,たしかにどこで情報を集めるか,どういう手段で情報を集めるか,といった点で手本も前例もない中,酒場,図書館,盗賊ギルド,交易商人など,「どこが適切そうか」に想像力を巡らせ考えていたので楽しかったのですが,ちょっと経験を積むと考えるまでもなく過去の経験から引っ張り出せるようになるので,後は単なる作業に堕してしまいます。 TRPGのシナリオの構成上,情報収集の過程が入り込むのは避けられないと思いますし,それは構わないのですが,「シティアドベンチャです。頑張って情報収集してください。楽しいでしょう」というシナリオを用意されると,僕にとってはつらい一日になりそうです。 2. は今回対象外とさせてください。 3. は,簡単に。 この部分は面白いと思います。でも,同時に非常に難易度が高いとも思います。 経験の浅いプレイヤ相手であれば,驚きと感動を与えることも比較的容易ですが,すでに様々な驚きと感動を食らっているベテランプレイヤ相手,もしくはミステリィの愛読者相手になると,ちょっとやそっとひねった程度では「ああ,この結末はあのシナリオのバリエーションのひとつだな」と驚いてもくれませんし感動もしてくれません(表面的にはほめてくれるかも知れませんが……)。 それでも,うまくやれば楽しませることができると思いますが,最初に書いたようにその難易度はかなり高い物となるでしょう。

『Aの魔法陣』の楽しさはどこにあるか

一般 kilica 2006/5/14
久々に「GM日記」が更新されていました。相変わらずクオリティ高し。 『Aの魔法陣』についても載っていました。 あの後,いくつかの紹介サイトを見てみました。 「どう遊ぶと面白くなるのかどうもイメージできませんでした」という原因にはいくつかあると思いますが,まず,ルールブックに載っている例が良くなかったんだと思います。「良くなかった」というのは僕向けじゃなかった,と言う意味です。 「Aの魔法陣」で花見というテーマですら遊べるは分かったんですが,「それって面白いの?」というのが根源的な疑問。例を読む限りでは「これは面白そうだ」とは思わなかった。 また,巻末のリプレイも,まあこのサイトを読んでいる人なら容易に想像つくと思いますが,…まああのノリにはついて行けそうにありません(^ ^;)。 ルールブックにも書いてありますとおり,従来のタイプのシナリオを遊ぼうという場合は既存のRPGシステムでやった方がずっと楽しく手軽に遊べると思います。 しかし一方で,熱狂的なファンも多数いるRPGです。強烈に人を惹きつけるだけの魅力が僕に隠れて存在しているはずです。というわけで,いくつかのサイトを回って考えてみました。 TRPGの本質とAの魔法陣(でみのげーむ)
GMの頭の中の状況をPLと共有する事を『共通認識の作成』とし、PLの行動を『行動宣言』という言葉で表すならAの魔法陣は、ただひたすら『共通認識』と『行動宣言』を繰り返すシステムである。
旧来のRPGは,「共通認識の作成」を「システム(ルールや背景設定)を読み込むこと」によって相当程度行えるよう,またそれをプレイヤやマスタに期待してデザインされています。 しかしシステムですべてを記述することは出来ませんし,読み込んだ結果の解釈も人によってズレが生じます。そうしたズレやこぼれ落ちた部分を掬うのがセッションの場でのマスタとプレイヤ間のやりとりであり,それは補完的な役割にすぎませんでした。 一方,「Aの魔法陣」は,このように従来補完的な役割に過ぎなかった部分をゲームの中核に持ってきています(上の引用記事に従えば)。ここが,「人を選ぶ」と言われる最たる部分なのでしょう。つまり,「どこを楽しむか」という層(レイヤ)が,「Aの魔法陣」と旧来のRPGとで異なっているのです。 「共通認識の作成」をセッションの場で築き上げることが楽しい人,あるいは「システムを読み込むこと」を面倒だ,苦手だと思う人は「Aの魔法陣」を楽しく遊べるんだと思います。 一方,「共通認識の作成」をセッションの場で築き上げるなんて面倒なだけだ,あるいは「システムを読み込むこと」が楽しい人は,旧来のRPGを好むでしょう。 この構図は,前に書いた「TRPGの苦労は買ってでもしよう」と同じといえます。 並べると次のようになるでしょうか。
  1. 第1世代…D&D(物理法則に関する共通認識をシステムで提供)
  2. 第2世代…Rune Quest(物理法則と背景設定に関する共通認識をシステムで提供)
  3. 第3世代…FEAR系(物理法則と背景設定と物語に関する共通認識をシステムで提供)
  4. 第4世代(?)…Aの魔法陣(システムでは共通認識を提供しない)
世代が増えるごとにシステムで提供する範囲が増えていましたが,なんと第4世代で反対のベクトルに進みました。 さて,「Aの魔法陣」を同じメンバで遊び続けて,過去の判例という共通認識ができあがってくるとその時どうなるのでしょうか。「共通認識」は飽和状態に近づき,セッションの現場で「共通認識の作成」を行う割合はどんどん低下していく,と言うことが予想されます。「共通認識の作成」を楽しみにしているというのであれば,楽しめる部分は少なくなっていくことになります。 しかし,ひょっとするとそこからが楽しいのかもしれません。ちょうど,いきなり作った9レベルのキャラクタと1レベルから育て上げたキャラクタでは遊んでいるときの感覚が全然違うように。 とはいえ,そういった予感があると言うだけで根拠も実例も何もありませんが。

予告編

一般 kilica 2006/1/14
映画の本編の前によくやる近日公開作品の予告編をみると,大抵どれもこれもめちゃくちゃ面白そうで「全部観たい」と思うのですが,経験的には「ほとんどは予告編ほど面白くない」ことが分かっているのでスルーしています。 偶にだまされて観てしまうと,「よくもまあこの本編から上手く編集したものだ」とそのテクニックには感心します。 しかし120分の駄作を1分に縮めることで傑作が作れるなら,240時間の映画を作っておいて1/120に縮めれば2時間の傑作映画ができる・・・訳はないですね。 ところで最近はTRPGでも「次回予告」を設けているようです。しかしどうも映画の予告編とは逆に陳腐な文章で盛り下げる方向に働くことが多いような。『れれれ』の『深夜三流俗悪アニメの逆襲』ならぴったりなんですが(^ ^;。 しかし,アニメの次回予告は,視聴者が次回も見てくれるように「面白そうだ」という期待を煽るところを狙っているのに対し,TRPGの次回予告はシナリオに沿った方向にプレイヤを誘導することが一番の狙いになっている,と僕は理解しています。 であればもっと別のTRPG向きの「予告」があるんではないでしょうか。 アニメの次回予告的な手法は確かに非常にスマートで多くのプレイヤにとっても馴染み深く優れた伝達手段ですが,効果的な「次回予告」を作るのは最初にこれ考えついた人が思っていたほど簡単ではなかったということです。 で,この話はここで一応おしまい。次回予告等で先のストーリィの触れることがそもそも好きじゃないのです(^ ^;。 コンベンションで遊ぶ頻度が高くなれば続きを考えるかもしれません。