経済学者 日本の最貧困地域に挑む―あいりん改革 3年8カ月の全記録 編集

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登録日
2017/1/14 8:19
カテゴリ
一般
ISBN
B01M1NBT4U
感想

 大阪西成の「中核」あいりん地区----といえば僕でも聞いたことのある「問題地域」ですが、維新の会からの依頼を受けて特別顧問として経済学者の筆者が就任し改革を試みた、その記録が本書となります。

言ってみれば、冒険企画局さんが協力した「ルワンダ中央銀行総裁日記」の日本版とも言える内容ですが、何もかもがないルワンダの場合とは真逆で、何もかもが決まっていてがんじがらめになっていて動かせない----国、大阪府、大阪市にまたがる事なかれ主義の官僚機構と縦割り行政、長年に渡り日本でも最も根深い行政不信を蓄えてきた労働者、彼らを支えたり利用したりする活動家、この地区の悪評や問題に悩まされる周辺地域の住民など、もう触りを聞いただけでもどうにもなら無さそうな地域の問題に、これまた日銀出身で経済学者である筆者が挑むことになります。

いろいろな読みどころのある本書ですが、基本ラインは上のような状況の大阪西成あいりん地区の諸問題をどう解いて改革をすすめるかというサクセスストーリで、まずこれが面白くてどんどん読めてしまいます。

それからもう一つの軸が、こうした行政の実務、どう進めていくものなのか、という実務的なところが、もちろん表面的な部分ではあるのですが分かることです。それに加えて、組織の論理に縛られる事なかれ主義の役人たちをどう動かしていくのか、「府市合わせ」などとも呼ばれる犬猿の仲の大阪府と大阪市をどう巻き込んでいくか、行政不信が極まり既得権益を持つ労働者や周辺住民をどう説得するか、といった人間関係を構築して周りを動かす方法が実録として読めることです。

筆者は大阪維新の会の幹部から直接依頼されて特別顧問に就任して橋本市長(当時)などとも直接話せる立場ではありますが、その立派な肩書のわりに予算も持たず人事権もなく部下もいないという中、地域の人との関係を築き、キーパーソンを押さえ、役人たちに貸し借りを作りながら彼らを巻き込んでいきます。

筆者は本業は経済学の研究で、経済学を武器にこの任務に挑むわけですが、その中で使った「外部性」「内部化」「集積の利益」「統計的差別」といった概念を解説してくれていて、ああ、なるほどこういうふうに使うのか、というのが実例を通して理解できます(経済学の教科書的な書物を読んでいると更に理解できるかと)。

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