最新更新日:

2001/04/18


Information
(各種情報)

Reviews
(製品紹介)

Links
(リンク)


氷川TRPG研究室

The Red Stag Inn

初   出:1998/09/17
最新更新日:1998/09/19


 本記事は,Eric Hotz の "The Red Stag Inn"(以下,"Inn" )の紹介です。この作品は,中世ヨーロッパを背景世界の元にしているRPGの汎用サプリメントとして設計されているようです。タイトルの通り,Inn(宿屋)を扱ったサプリメントです。

 この作品は,以下のサイトより購入・ダウンロードすることが可能です。A4 サイズ,600dpi の PDF ファイル(ファイルサイズは約7MB!)で提供されています。画面で見るために解像度を落としたファイル(こちらは1MBちょっと)もありまして,購入すれば両方ともダウンロード可能になります。紙に印刷したものも注文できますが,相当割高になるため止めた方が良いでしょう。
 また,同サイトにはサンプルとして "Inn" のうちの4ページをダウンロードできるようになっています。興味のある方はまずそちらをダウンロードしてみるとよろしいかと。

Hyper Books のURL:

http://www.hyperbooks.com/

概観

 特定のRPGに特化しているわけではなさそうですが,中世ヨーロッパを忠実に再現しているタイプのRPGに向いているかと思います。Ars Magica あたりだと,そのまま使えそう。前半の紀行文などは,Ars Magica のサプリメント "Medieval Handbook" に良く似ています。
 逆にライトファンタジィだと,少し似合わないかもしれません。特にNPCなんかは浮いてしまいそう(^^;。

 全般的に,地味で落ち着いた雰囲気のサプリメントです。

 ルール的なデータなどはほとんど載っていません。わずかに,宿の料金と品質が数値化されているのと,NPCに能力値が付いている程度です。ただ,これらの数値が具体的にどう働くのかは良く分かりません(^^;。

 これは私の主観が思いっきり入っているのですが,8$という値段は(特に他の海外の諸製品と比べると)やや高めかなとも思います。

使い道

 やはりシナリオに登場する宿屋として使うのが一番普通かと思います。一度出して終わり,では設定の情報量からいって勿体無いので,パーティのホームタウンにある行き付けの宿屋ということにするのが良いんではないでしょうか。Ars Magica だと,コヴナントの側の宿屋ということでばっちり?

構成

 本作品は,大きく二つのパートに別れており,全36ページのうち,前半の13ページが Father Daniel(ダニエル修道院長)の紀行文,後半の18ページがRPGのマスター向けの設定となっています。残りは,1ページが表紙,4ページが地図です。

 こういう構成というのは,世界の雰囲気を伝えるという目的と,ゲームで使えるものを提供するという目的の二つを満たしているのですが,その分ページ数も食いますし,なかなか贅沢といえるんではないでしょうか。

  • 前半(ダニエル修道院長の紀行文)
  • ここ最近の大雨のせいで,荷馬車や荷車がはまり込んだりしかねない泥沼が道のあちこちにできて,シェルノーヴァへ至る街道は悪路と化していた。
     これは,"Inn"の出だしの部分ですが,文章はこの後も淡々と続いていきます。派手な立ち回りが起きるわけでも,人間関係のドラマがあるわけでもありません。しかし,読み物ではなく宿とそれを取り巻く世界を紹介するという機能はしっかりと果しているので,むしろ好ましいといえましょう。

  • 後半部(Red Stag Inn の解説)
  • 宿の歴史

    ・・・この谷に昔から住んでいた住人たちの手によって修復され,放置されていた部分までもが作られた。会合場所として,穀物の貯蔵庫として,そしてその他雑多な食料の保存庫として使われてきた。続く300年の間は,斯様に建物の基本構造が残っていたのである。・・・
     400年以上に渡るといわれる "Red Stag Inn" の歴史を,2ページ近くの紙面を割いて説明しています。この解説の中にシナリオネタになりそうなお話が含まれていまして,なかなか面白いです。

    宿の見所

    一対の石の彫像が宿の入り口を守り,宿を訪れる全ての客に挨拶をする。彫像の一方はリュートを弾く楽士であり,もう一方は剣と盾を携えた戦士である。・・・
     Inn の38ある部屋についてそれぞれ解説されています。こういう部分を手を抜かずに解説しているのがいいですね。そして各ページに2点づつくらいの割合で,Hotz 氏のイラストが載せられています。

    NPC

    ペインは二十年近くも兵士として勤め上げ,多くの土地で多くの戦役を目にしてきました。現在,彼は密偵として王家のために働いています。彼は街道を旅して歩き,巡礼者と土地の商人に混じって道行く人々から情報を集めています。・・・
     紀行文の方に登場したダニエル修道院長のたびの道連れと Inn にいる人々が合計9名紹介されています。それぞれのNPCにはイラストが付けられています。能力値も載っており,どうも D% を使うタイプのシステム用らしいんですが,どのシステムかは不明です(^^;。

  • 地図
  •  本作品には,以下のような地図が付いています。
    • 地方図:Inn 周辺の Wellwx という地域の地図ですが,300×240マイル程度の結構大きな縮尺の地図となっています。
    • 宿の平面図:Inn の地下一階から地上3階までの地図が2ページにわたって載っています。ところでこの宿,50m×30m程度と,村の宿屋にしては不似合いなほどでかいです。最大で400人くらいを収容できるって書いてあるし・・・。
    • 宿の敷地:宿と,それ以外の厩・家禽小屋・薬草園などの位置関係が乗っています。