『精霊戦記(仮)』システム
『精霊戦記』は鋭意製作中の同人TRPGシステムです。現在のところ、サイコロ・フィクションをベースに作っています。
表向きは。
しかしながら、そのキーメカニズムは実は全く別なところにあります。
この記事では、それを順を追って説明していきたいと思います。
D&Dの魔法システム
この魔法システムはかなり独特でした。後に続くほとんどのTRPGの魔法は、キャラクタ作成時に使える呪文を選んでおいて、セッション中ではマジックポイントを消費したり決められた回数の範囲内で魔法を使っていくのに対して、D&Dでは魔法使いはその日の朝に「今日どの呪文を使うか」を呪文書の中から選ばなければなりません。例えば、10種類の魔法を知っていても、そのうち予め選んだ3つの魔法しかその日は使えないのです(しかも同じ魔法を2回使いたければ、2回選ばなければなりません)。
しかもクラシックD&Dでは、低レベルのうちは1日に魔法を数回分しか準備できません。1レベルに至っては1回分のみです。非常に厳しい。
事前の情報収集が重要
そこで魔術師のプレイヤは、無駄な魔法を準備しないようにするため、これから挑む冒険について、少しでも手がかりを集めようとします。ダンジョンが自然の洞窟であれば扉の解錠の呪文は出番が少ない可能性が高い、天井の高い教会のような舞台では浮遊の魔法が効果的に使えそう、敵が亜人中心なら精神系の呪文が良く効く、魔法使いが敵なら魔法探知や解呪の魔法が是非欲しい、などなど。
このように D&D の魔法システムは自然と、事前の情報収集と分析が冒険の成否を左右する仕組みになっていました。筆者はこのシステムがとても気に入っていました。情報収集をしても確度100%の情報が全て手に入るわけではありませんので、予想が外れた場合も考慮に入れ、様々な障害を想定しながらその日の魔法を選んでいました。実のところ、筆者にとってはそこがD&Dセッションのハイライトで、ダンジョンに入ってからはその答え合わせのような位置づけだったりもしました。
準備ができない
しかし残念ながら、それ以外のTRPGでは事前の情報収集がそこまで冒険の成否に効いてきません(D&Dでも、魔法を使うキャラクタ以外は事情は同じです)。情報収集というと、シナリオにまつわる謎(敵の居場所や動機など)を解くために行う傾向が見られます。
何故でしょうか?
それは、いくら敵の情報を集めても準備できることがルール的にあまりないというのが構造的な原因と考えられます。
- 「敵はアンデッドだ!」そうか、嫌だなあ。
- 「舞台は廃墟となった古城だ」ふうん。
できる事といえば、それ用のアイテムを購入しておくくらいではないでしょうか。
TRPGにおける情報収集が、敵の居場所を特定するとか、敵の動機を探るとか、犯人である証拠を集めるとか、そういった方向に向かったのもそのせいかもしれません。
調査−準備−遂行
ではなぜ D&D の魔法のようなシステムは一般的ではないのでしょうか? これについては TRPGが「人間」というメタファのトークンを操作して進めるゲームだから、というのが大きな原因になっていると見ています。「昨日は水泳が得意だったけど今日は全然泳げなくて、代わりに森の植物に関する深い知識を持っている」というのは、「人間」のあり方に一致しません。
目的を達成するための手順としては、
- 情報を集め分析する
- 集めた情報に基づき作戦を立て、準備をする
- 作戦を実行する
といった感じでしょうか。
我々も、例えば週末に大勢でピクニックに行くとなれば、お弁当のための食材を買っておくとか、前日に仕込みをしておくとか、交通機関を調べて列車のチケットを手配しておくとかするわけです。あるいは企業で新しい製品を作るとなると、専門家を雇い入れたり、少々金はかかるけど新しい設備を入れたり、いや安く済ませるために既存の設備を移動させて使ったりといろいろ準備をするわけで、その周到さと手際が成否に大きく影響することも少なくありません。
しかしながら、TRPGではおそらく前述のような理由などにより「集めた情報に基づき作戦を立て、準備をする」ためのルールがあまり用意されていません。D&Dの魔法システムはその例外と言えましょう。
『精霊戦記』のキーメカニズム
『精霊戦記』では、このニッチを狙ってみます。
- 情報を集め分析する
- 集めた情報に基づき作戦を立て、準備をする
- 作戦を実行する
という手順をゲームの根幹に据え、全PCにD&Dの魔法システムを載せたようなシステムになっています。
『精霊戦記』のPCは全て、「精霊」を操ります。
PCたちはセッションの最初に、これから挑む「ダンジョン」に関する情報を集めます。
集めた情報を元に、どのような力があればそのダンジョンを攻略できるかを考え、それに見合った精霊を召喚してダンジョンに挑みます。
精霊は種族によって持っている力が異なり、得意な分野、苦手な分野がはっきりしています。キャラクタはそれぞれ手持ちの精霊の中から役に立ちそうな精霊を選んで召喚しておきます(精霊の召喚には何時間もかかるので、必要に応じてダンジョンの中で呼び出すわけには行きません)
サイバーパンクな世界観の場合は、知識や技術をメモリにロードすれば使えるようになる、といった設定であれば同じようなメカニズムを採用できるかもしれませんね。
あるいは、たくさん作ったキャラクタの中からミッションに応じたチームを都度結成して事にあたる、というシステムもいいかもしれません。Ars Magica はこのタイプ。ただ工夫しないと、キャラクタを必要な数だけ用意するのが大変ではあります。
募集
さて、『精霊戦記』制作チームは「面白そう」「わいわい一緒に作ってみたい」という人を募集しています。
当面、募集しているのは次のような人材です。
- システムの制作:今のところ基本的なルールといくつかの精霊の能力、大雑把な数値バランスが作られています。既存システムの改良や追加ルール作るのが大好きな方とか募集しています。
- 背景設定:なんとなくファンタジーな世界、というのと、システムから要請される制限がいくつかあるだけで、何も決まっていません。好きに作れます。ヘルプミー!
- イラスト:かわいい/格好いい擬人化精霊とか描ける人
他にも「こんなことできるけどどうでしょう」って方が居ましたらお気軽に @kilica まで(ここのコメントでもOK)。