2014/8/23 4:41
『化石的ゲームマスター読本 1』を読む
玄兎さんにいただいた『化石的ゲームマスター読本 1』を読みました。
本書は新書サイズ 234ページの同人誌で、コミックマーケット86「氷川TRPG研究室」に委託で販売された他、現在通販も準備中です(リンク先をご覧ください)。
どういう本かといいますと、
これは自分のプレイグループの会報に書いていたテーブルトークRPGのエッセイのうち、特にゲームマスターとして知っておきたい事柄について再編集した同人誌です。でまあ、目次などの概要はリンク先をご覧いただいたほうがいいかと思います。
まず本書をざっと読んで受ける印象としては、「非常に丁寧な記述だ」というものです。やっぱり我々は第一には遊ぶ側なので、こういった本を書く場合、どうしても、得意な分野は記述量が多くなり、反対に苦手な分野は少なく、ともすると省略してしまいます。……いやまあ、僕はそうなんですが。
しかし本書には、そういった偏りがみられません。ジャンルの紹介にしても、システムタイプの紹介にしても、同じような文章量で紹介されています。
これは書き手に知識量が要求されるだけでなく、得意な分野を書き過ぎない、苦手な分野から逃げない意志の力が必要な仕事です。それも、200ページ以上の本でこの公平な態度を続けなければいけないわけで、それだけで恐れ入ってしまいます。この作者、暇だ
本書のもう一つの特徴は、ゲームマスターの役割に関する網羅的な記述です。システムの選定、遊ぶ環境の準備、シナリオ作成、セッションハンドリングと、どの分野についても隙なく、漏らさず、前述の公平性を持って解説されているのです。よくこれだけ、トピックを拾い上げたなと思います。目次だけでも価値があるといえます。この作者、暇だ
しかしそれだけに、ゲームマスター初心者に安心して薦められる本と言えます。 まさにゲームマスター初心者に最適のガイドブックといったところです。
本書について、もう一つだけ付け加えたい。本書は、基本的にはゲームマスタ入門者向けの本であり、ベテランマスタにとっては概ね了解している事柄が書かれています。しかしながら、本書の随所にTRPGの諸概念について、バランスの良い、明快な定義がされていてはっとさせられます。いくつか拾ってみてみましょう。貴方ならどう説明しますか?
判定とは、ある不確定な事柄に関する事実を決定するルールである。(p.62)
テーブルトークRPGでは様々な状況をゲームとしてプレイすることができる。そうしたゲームの幅を支えているのがシナリオの存在である。(p.120)
キャラクターとは何か。一言にまとめるなら、彼らはゲームの舞台の住人たちである。しかし実際にセッションに登場するキャラクターたちには、ゲームのコマであることや、物語を構成する要素であることなど、様々な役割が期待される。(略)
キャラクターを表現するものは、大きく二つに分けることができる。ひとつはキャクターの行動。(略)もう一つはゲームデータである。(pp.186-187)
こうした概念の定義を見て、さて自分ならどう表現するかを考えてみると、筆者のTRPGに関する深い理解と力量を読み取れるのではないかと思います。ベテランマスタにとっても、本書をしっかり読み込むと新たな発見があるかもしれません。