2016/3/6 11:47
『オリヴァー・ストーンが語るもう一つのアメリカ史』
タグ: 歴史
第2次世界大戦辺りからのアメリカ合衆国の紛争への関わりと大統領の決断を批判的に書いたものです。文庫本、400ページくらいのが3冊もありますが、面白いので集中して読めます。
アメリカ合衆国というと、民主主義、自由主義の擁護者という顔と、横暴な帝国としての顔の2つがありフィクションではしばしば後者として描かれたりするんですが、本書ではそうしたフィクション作品で描かれる悪の帝国像も可愛く見えるくらい、諸悪の根源として描かれ、その行動が逐一にあげられています。
キューバを始めとした中南米、ベトナム、イラン、イラク、ソ連などなど、枚挙に暇がありません。フィクションでそうした国家を書きたいという方には非常に参考になるでしょう。ただそのまま写すと読者からは、重大な事案に対してこんなに安直でずさんな決定をするなんて現実味に欠ける、というツッコミを受けるかもしれません。
敵を(勝手に)設定して叩く、というのがアメリカ合衆国の基本的な行動原理なんだな、というのが読後の感想です。
もう一つの感想は、よく戦後、核兵器を使わずに済んだな、と思いました。核兵器使用の決定権が結構下の方まで降りていて、あいつらぶっ潰すのにじゃんじゃん使え、みたいな恐ろしい状況にあったようです。中南米でも、ベトナムでも、朝鮮でも、絶えず核兵器仕様のオプションは検討されていたと本書では書かれています。
そしてもっと言えば、……よく核戦争で世界が滅ぼなかったな、と思います。