2020/12/28 1:50
『リベラリズムの終わり』『アフターリベラル』
タグ: 政治
先週くらいからリベラルに関する新書を2冊読んでました。このあたりのテーマの本を読むのは久々です。
いずれもタイトルを見ると「リベラルもうダメだ」みたいな内容に見えますし、実際その批判を多く含みますが、扇情的なものではなく限界があることを認めではどうすればいいかを考えるための足がかりになるような内容です。
また、どちらもここ最近(概ね1年)出た本で、取り上げられている事例も最近のものなので関心を持って読めるのではないかと思います。
『リベラリズムの終わり その限界と未来 (幻冬舎新書)』(萱野稔人)
https://booklog.jp/item/1/4344985753
こちらは、政治的なリベラリズム(個人の自由を尊重する立場)の抱える限界について、主に哲学・思想的な側面から迫るものです。 取り上げられているトピックは2つ。
一つは、同性愛者の結婚を認めるか。 もし認めるなら、一夫多妻(一妻多夫)や近親婚はなぜ認められないのか。
多くのリベラルは認めがたいと思いますが、同性愛婚を認めるロジックを公平に適用すれば、一夫多妻や近親婚を認めざるを得なくなるのではないか、ということについてミルの『自由論』を援用しながら考察しています。 よくリベラルが「ダブルスタンダードじゃないか」と批判されるときの議論で、青識亜論さんの論法に近いと思います。
2つ目は、外国人による生活保護の不正受給は社会の右傾化が原因か?。
こちらは表現の自由とは関わりが薄いですが、だいたい「リベラル派理想論ばかり言う」と批判されるときに出てくる問題です。功利主義、ロールズの『正義論』などを引きながら問題点を指摘しています。
『アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治 (講談社現代新書) 』(吉田徹)
https://booklog.jp/item/1/B08HM17HLF
こちらはより広くリベラルを取り扱っていて、リベラリズムの歴史から、政治におけるリベラリズム、経済におけるリベラリズムの紹介から、なぜ権威主義が台頭したのか、など、どちらかというと思想よりも社会や経済の変動がどう影響しているかを示してみせている本になります。
特に、現在のリベラルや権威主義をどのような構図で理解すればよいのか、その指針を与えてくれます。
終章ではまとめとしてマイケル・フリーデンによるリベラリズムの流れと分類が紹介されており、これを理解すると、なるほど、「リベラル」を語るときに議論がずれてみんな混乱するわけだ、とわかります。 表現の自由に関して衝突しがちなのは、5.寛容リベラリズムになるのかな。
1. 政治リベラリズム
絶対王政や教会に対する個人の抵抗権や所有権を守ろうとする潮流
(革命)
2. 経済リベラリズム
商業や取引・貿易の自由を唱えるリベラリズム
3. 個人主義リベラリズム
個人の能力を信じ、それは開花されなければならないとする個人主義を擁護するリベラリズム
(第2次世界対戦)
4. 社会リベラリズム
社会保障/教育の重視、市場の規制など社会を抑止人権が守られる社会を指向する考え
5. 寛容リベラリズム
マイノリティの権利を擁護し寛容の精神を説くリベラリズム