2005/6/11 6:10

プレイヤのシナリオ

タグ: ゲーム 科学技術 TRPG 考察

コンピュータの処理性能の向上によって最近では地球規模の減少をモデル化しシミュレートするという事も可能になってきましたが,依然として長期的な未来を予測することは不可能です。
昨年,環境・健康・社会などの専門家が集まり,どの問題を優先的に解決するべきかを話し合い「コペンハーゲン合意」というものを発表したそうですが,その中でも結局は,問題も対処法もはっきりしている課題(飢餓や HIV,マラリア)から順番に片付けていこう,という結論に。

これは,将来のことについては不確定な事柄が多すぎるため当然ともいえます。例えば地球温暖化についても,数十年後には化石燃料資源の枯渇によって温室ガスの排出が減るかもしれないし太陽活動の低下によって進む寒冷化と相殺されるかもしれません。
もっと身近に,自分の40年後に備えることを考えても,不確定要素は大きすぎます。変動を繰り返しながら現在程度の景気が続くのか,20世紀初頭のような恐慌が襲っているのか,年金制度は破綻していそうだけど,そもそもまだ生きているのかも怪しい。到底予測なんてできそうにありません。

そこで,正確な将来の予測の代わりにとられる現実的な解決策として,幾つかの「シナリオ」を描いてそれを比較検討し,最も適したシナリオに沿って行動していく「シナリオプラニング」と呼ばれる手法があります。
先ほど例に挙げた40年後に対する備えに当てはめると,「日本経済が恐慌に陥っていた場合」「日本経済が不況に陥っていた場合」「日本経済が現状を維持していた場合」「日本経済が高度成長期のような活況を呈していた場合」という想定のシナリオをそれぞれ分析・比較し,最も適当と思われるシナリオに対する対策を実行していくわけです。

じゃあどれをどうやって選べばいいんだ,という疑問がわいてくるわけですが,最悪のケースを想定してそれに対応できるようにする「予防原則」という方針と,想定した事態が発生したときの影響額に発生確率をかけ,対策費用と比較して採否を決める「費用便益分析」と呼ばれる手法があり,EU 諸国は前者を,USA は後者を採ることが多いそうで,確かになんとなくそんなイメージがあります。

以上が日経サイエンス2005年7月号の「不確実な未来をどう扱うか」という記事のあらましで,記事では第3の方針である「頑健な戦略」をとるのが良いという主張が出ていますが,興味がある方は買って読んでください。

日経サイエンス2005年7月号


でこっからが本題です。もちろん RPG の話です。

「先を考えるプレイ」で書いたように,「問題が起こってパーティが呼ばれて対応することになった」という構造のセッションよりも「パーティが現状を分析した結果,深刻な問題が発生することが予測されそれに対する対応をとることにした」という構造のセッションの方がゲームとして面白くなるだろうと考えています。
つまりプレイヤが現状を分析し,「シナリオ」を描いて比較検討し,対策を実行する,というセッションになるわけです。

ただ,プレイヤたちがシナリオを描けるほど十分に現状についての情報をマスタ側で準備・提供できるか,という問題があり,テーマによって向き不向きはあるだろうと思います。

また多くのプレイヤ(僕もそうだけど)はそういったプレイに慣れていないというか「自分でシナリオを描く」という発想からしてそもそもありませんので,プレイヤたちがそうしたスタイルに慣れるまではマスタ側からの相当のプッシュが必要になると思います。さもなくば「自由に動いていいといわれたけど何をしていいか分からない」という例の困った状態と同じ事態に陥ってしまうでしょう。

どうすればこういったセッションが上手く機能するかについても,今後考えてみたいと思います。
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