2004/10/23 15:08

門前通りのカラス(修道士カドフェル#12)

タグ: 作品

【タイトル】 門前通りのカラス(修道士カドフェル#12)
【筆者/出版社】 エリス=ピーターズ/社会思想社
【発行時期】 1993
【URL】
【評価】★★★★
【紹介内容】
中世ヨーロッパの修道院を舞台とした珍しいミステリィ。全部で20作出ていますが,社会思想社のはもう絶版で入手困難です。最近,光文社から出版され始めました。

このシリーズでは当時の修道院,街や人々の様子が細かく描かれていますが,本作では立派だが狭量な新任司祭が町中にもたらす混乱を描いています。着任してわずかの間に修道士,農夫,パン屋,子供たち,若い娘など,街のあらゆる人々から直接的で個人的な恨みを買います。興味深いのは,当時の司祭の人々への影響力です。僕は名古屋という比較的大きな都市で育ってきましたので,これだけ大きな影響力を直接もたらす個人がいるというのはなかなか想像がつきません。
もちろん現代でも政治家や大企業の社長の言動は多くの人々に影響を与えますが,それはあくまでも間接的なものです。しかし本書では,この司祭が,「直接,個人的な」恨みを買うほどの人々とのつながりを持っている様が描かれています。RPGでマスタをやっていてもこういった影響力というのは表現できていないのですが,なんとか再現してみたいものです。

また,当時の社会でどんな行為が不和や対立をもたらすか,という点を知る上でも今回の事件は参考になります。この司祭,いろいろもめ事を起こしましたからね。
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