2008/12/6 3:15
『中世世界とは何か』
タグ: 歴史
しばらく歴史関係の本からは遠ざかっていて、久々の読書。
「ヨーロッパの中世」という新しいシリーズの第一弾。2巻以降は、タイトルを見るにテーマが絞られているようですが、この『中世世界とは何か』は概説的な内容を扱っています。
ただし通説的な歴史記述からは離れ、最新の研究成果を引きながら研究者の間で議論になっているポイントを示し、一般的な読者層ではなく研究を志す人々に向けた内容になっています。やや難しいかもしれませんが、歴史研究に興味を持つ高校生なんかに読んで欲しい一冊です。
とりわけ著者の専門である中世初期については、積極的に、時には攻撃的とも思えるほどの新しい中世世界の描像を提示しており、歴史研究の面白さが読者に伝わってきます。
Rune Quest のサーターの部族のありようについて歴史上のモデルを探したい人にもいいかも。
序章 「中世」を切り出す
第一章 小国家の時代
1 民族集団の生成
2 ポスト・ローマ国家の独自性
3 地代と租税
4 領主と農民の共生
5 覇権国家カロリング朝のパラドックス
第二章 中世ヨーロッパ・システムの生成と展開
1 定住空間の変容
2 交換活動の発展
3 中世法の論理と社会秩序
4 支配の原理として封建制は機能したか
5 騎士と傭兵
第三章 統治と政治秩序の体系
1 帝国と王国
2 王権の変遷
3 統治空間の編成原理
4 俗権と教権の長い対話
第四章 碧き血統----ヨーロッパ貴族の歴史的変遷
1 フランク貴族の相貌
2 中世貴族の誕生
3 身分制の貴族へ
第五章 規律と恩寵----修道制の多様な界面
1 禁欲の心性
2 支配の類型としての修道制
3 中世キリスト教学の増殖炉
4 霊性と奇跡の空間
5 修道士と異端
おわりに ----ヨーロッパ世界と中世