何故ゲームで物語を作るのか
物語のメディアの代表である小説は、作者が物語を考えます。物語は、作者の能力の範囲内でまったく自由に操作することができます。物語を自由にしたいのであれば、本来小説を書けばよいのです。ルールが存在する不自由なゲームというメディアで自由に物語を作りたい、というのは、ちょっと矛盾したところがあるようにも思えます。
では何故、ゲームというメディアを利用して物語をつくろうとするのでしょうか?
それは、ゲームというメディアに物語創作と親和性のある次の様なメリットがあるからと考えられます。
1. 意外性
サイコロの目や他のプレイヤの行動など、プレイヤのコントロールの及ばないところで出る結果は、作家として頭のなかで考えていても出てこないような意外なドラマを生むことが有ります。
2. ブレインストーミング
パーティの行動は、参加プレイや全員で話し合ってその方向性を決めます。そこでは自分では思いつかないアイディアが出てきたり、見落としていたメリット・デメリットに気づいたりします。そうした他人のアイディアを踏まえて新しいアイディアを出し、また別のプレイヤがさらなるアイディアを出し、というアイディアの連鎖で一人では作れない物語を作ることが出来ます。
3. 一貫性・現実性
ゲームにはルールが定められています。特にTRPGでは、世界をモデルにしてルールが作られます。ルールに従って遊んでいれば、自然と世界観に沿った一貫性のある物語となります。
4. 省力化
物語を作るというのは、多くの人にとって大変な作業です。「面白い」と思わせるような物語を作るのも大変ですし、またあまり面白くない退屈な部分もそれなりには作らなければなりません。
しかし、ゲームというメディアを利用して物語を作るのであれば、ゲームを遊んでいれば自然と物語が生成されていきます。