ダンジョンシナリオ II

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同人
2011/12/13
カテゴリ
シナリオ作成

第二部 ダンジョンシナリオ.II

この章からは、2 つ目のダンジョンを作ります。

今回はもうちょっとだけ規模を大きくして、7 つ程度の部屋からなる ダンジョンにしてみましょう。

 

一つ目のダンジョンの作り方は覚えていますか。

まずダンジョンの基本要素は右の 3 つでした。 地図・モンスター・宝物

 

そして、地図や敵について、パーツを入れ替えたり、数を変えたり、順番を変えることでより面白くできないか検討する方法を学びました。

さらに、様々な手がかりを与える事も覚えましたね。

2 つ目のダンジョンでは、これらに加えて次の 3 つの要素を追加します。

• 戦術

• 目的と動機

• モンスターの反応

これらの要素を加えることで、ダンジョンは単にうろついて出くわしたモンスターと戦うだけの場ではなく、場の有利不利を見極め戦術を実行し、目的を達成するための作戦を立て実行する戦場へと変わります。

シナリオとしては、これらの要素を組み入れることでよりゲームらしくなると言えます。ダンジョンシナリオの作者としての最大の腕の見せ所でもあります。そして、本書の山場とも言えます。本章から始まる第二部「戦術」「目的・動機」「モンスターの反応」の組み込み方の要領がわかれば、一人前のダンジョンシナリオ作成者を名乗れます。

さて、最初に作ったダンジョンに比べるとぐっと難易度は上がりますが、これらの要素もある程度はパタンに分類することができます。そのパタンは本章で解説しますので、最初のうちはその中から選んでダンジョンに組み込んでみてください。



サンプルダンジョン

目的

ダンジョンに巣食っている怪物を掃討するよう依頼を受けました。

モンスターの反応

部屋 2 のゴブリンは襲撃を受けると、部屋 4 のバグベアに応援を頼みに行こうとします。

部屋 6 にいる魔術師は、4,5 の部屋両方が破られ、かつパーティが一旦撤退した場合はその隙に財宝を持って逃走します。

モンスターの戦術

部屋 3 の巨大クモは入り口付近の天井に張り付いて犠牲者が部屋に入った時点で奇襲をかけてきます。逃がさないよう、完全に部屋に入った所で攻撃を仕掛け、鎧の薄いキャラクタを優先して狙います。

部屋 6 のホブゴブリンの衛兵は、部屋の入口で行く手を塞ぐように 3 人が並んで戦います。これに対し通路側は狭く 1 名までしか接敵出来ず、数の上で不利になります。4 と 5 の部屋を押さえていれば、両側から攻めることで数の不利を抑えることができます。

 

第 8 章 ゲームとはなにか

本賞の内容は、『TRPG シナリオ作成の道具箱』に掲載したものとほぼ同じです。

第二部を始めるに先立って、第二部の理論的な基礎となる「ゲーム」について改めてご説明いたします。ちょっと遠回りかもしれませんが、この基礎をしっかり抑えられているかどうかで、第二部で紹介するダンジョンシナリオの要素を自分なりに組み込めるようになるかどうかが決まるといっても過言ではありません。

ゲームとは何か

本書では、シナリオ制作の根幹に「ゲーム」を採用します。では「ゲーム」とはなんでしょうか。これにも多くの議論があるのですが、それを論じるのは本書の趣旨ではありませんので、ここでは天下り的に次のようなものをゲームとして定義します。

要は、このゲームの定義に基づいてシナリオを作ったときに面白くなればそれでいいのです。

そう。「ゲーム」とは、つまるところ参加者に対して強制的に“意志決定”を行わせるための仕掛けに他ならない。ゲームの参加者には、「管理資源」が与えられ、守るべき「制限」が明示される。そして、「障害」を克服して、「目標」を目指せ、と言われるのだ。目標にたどり着くための最適手は明白ではない

(葛藤)が、一手一手の判断により形勢が変わることは明らかで(結果に対する責任)、不完全ながら「どのような手を打てば、どんな結果になりそうか」を判断できるだけの情報がある(アカウンタビリティ)。参加者は、このような条件下で、自分の手を選択/決断しなければならない。つまり“意志決定”が強いられる。これが「ゲーム」だ。もうお分かりのことと思う。「ゲームの魅力」とは何か。それは“意志決定”の魅力なのだ。

外へ向かう言葉(後編)」--『馬場秀和の RPG コラム』

http://www.scoopsrpg.com/contents/baba/baba_20000417.html



最後の段に、はっきりとゲームの魅力の源泉が書かれています。

そう、「意志決定」です。

しかし「意志決定」と言われても、まだそれがなんなのか、判然としないかと思います。詳しくは引用元の記事をご覧いただくのが一番なのですが、ここではそのエッセンスを抜き出してご説明します。

「意志決定」は、素朴な理解では「ある事柄について自分で決めること」です。しかしこの素朴な理解でゲームにおける意志決定の魅力を引き出せるかというと、全然足りません。そのためには、引用文の中にある三つのキーワードを理解している必要があります。すなわち、

• 葛藤

• 結果に対する責任

• アカウンタビリティです。

 

葛藤

  複数の選択肢が、どれももっともらしく感じられ、どれが最適解

  かを判断することも、決まったアルゴリズムを適用して決めるこ

  とも出来ない。このため心中に悩みや迷いが生ずる状態であるこ

  と。

何かを意志決定するときに、そこには葛藤がなければなりません。葛藤もなく決めることができるのでは、あるいはゲームマスターから選択が指定されているのでは、意志決定は成立しません。

たとえば、「街には 3 軒の鍛冶屋があるけどオリバーの店が安くて品質がずば抜けていて納期も早い。他の店に比べて良いところばかりだ」という状況で買い物をするのであればこのオリバーさんのお店一択であり、たしかに「自分で決める」のではありますが、意志決定としては成立していません。

仮に、「オリバーの店は安いけど品質はイマイチ」「ジェフの店は品質はいいけど高くて納期が長い」「アンジェリカの店はいずれもそこそこの水準」であれば、どれも一長一短の選択肢でそこに葛藤が生じますので、意志決定として成立し得ます。

また、ゲームマスターから「突然崖の上から岩が落ちてきたので回避の判定をしてくれ」と言われてサイコロを振るのは、意志決定ではなく従ってゲームではありません。

 

シナリオを作るときには、まずはプレイヤたちが選べる複数の選択肢を準備します。それぞれの選択肢には、メリットとデメリットを持たせます。メリット・デメリットには、選択することで消費するリソースの種類(金、時間など)と量、リスク(生命の危険、失敗可能性、将来の状況変化など)などを使うことができます。

また、短期的(このシーンなど)に有利なもの、中期的(このシナリオなど)に有利なもの、またキャンペーンであれば長期的に有利なもの、などの選択肢を準備することもできるでしょう。

 

結果に対する責任

  選択/決断の結果が有為な差を生み、それが自分に跳ね返ってく

  る、逃れようなく責任を持たなければならない、という自覚があ

  ること。

意志決定を実行に移したその結果がプレイヤにとって何がしか意味のあることでなければなりません。どうでもいいことについて悩んで(葛藤して)決断したとしても、それは「結果に対する責任」を持てていないため、意志決定としては成立しません。

例えば、時間制限が存在しない状態でキャラクタが寄り道をするかどうかを決める場面を考えてみましょう。寄り道をすれば美味しい物が食べられ、しなければ素食となります。でも、プレイヤにとっては実はどちらでもいいことですね。

また、銀貨 5 枚で、敵組織の名前の由来を教えてもらえるとしましょう。プレイヤの好奇心は満たせるかもしれませんが(「そんな由来があったのか!」)、シナリオにはなんの影響を与えません。これも、「結果に対する責任」が欠落する例です。

シナリオを作る上では、意志決定の結果・影響がプレイヤたちに分かるようにします。「些細な決定が実はあとで大きく効いてくる」という展開は、意外性という点では面白いかもしれませんが、ゲームとしてはいまいちです。先程例に出した「敵組織の名前の由来」も、設定次第では実はシナリオを解決するための重要な情報に成り得ます。

どちらを選ぶかはゲームマスターの好みですが、意外性を重視する場合は、ゲーム的にマイナスになることを自覚した上でシナリオを作りましょう。



アカウンタビリティ

  複数の選択肢について、ある程度まで情報が与えられており、選

  択/決断した理由や根拠を自分なりにきちんと持っていること。

アカウンタビリティは「説明責任」などと訳されますが、プレイヤの意志に関わる部分です。複数ある選択肢からなぜそれを選んだのか、その根拠を持っているかどうかが問われます。

となりのプレイヤが推めたから、サイコロを振って適当に決めた、今日が 6 月だから、といった根拠はアカウンタビリティを満たしていません。

「価格と品質と納期を考えたとき、今後、最も不足しそうなのは手持ちの資金なので、価格を重視した選択をした」「今は何より時間が惜しいので、多少の危険は覚悟の上で谷間の道を突っ切ることにした」などの例は、アカウンタビリティを満たしている例と言えましょう。

アカウンタビリティはどちらかというとプレイヤ側の問題であり、シナリオでは準備できない部分が多いのですが、アカウンタビリティを満たせるだけの情報をプレイヤたちに十分与えておくことには注意します。全く情報がない状態で三つの道から選べ、というのであれば、プレイヤが当てずっぽうで、あるいはサイコロでも振って決めたとしても仕方ないことでしょう。

一般に、情報は多めに与えます。部屋の数、モンスターの数・種類、ボス、動向、時にはダンジョンの地図すら、最初からプレイヤに公開してしまっても構いません。事前の優秀な調査でわかったのです! 簡単すぎると思えば、それらの情報から幾つかを隠すことにしても構いません。最初の 4 つの部屋までしかわかっていない、部屋の数は分かっても配置まではわからない、性格な人数はわからない、ボスは正体不明、などなど。

 第9章 戦術

ちゃんと戦闘ルールが作られている TRPG システムであれば、モンスターを相手にさいころを振って戦っているだけでも十分に楽しむことができます。ルールブックからチョイスして様々なモンスターを出すことでしばらく遊べるでしょう。

しかしそれをずっと続けていると、さすがに単調で飽きてきます。変化を付ける方法はいくつかありますが、戦術を組み込むというのがそのひとつです。ただモンスターを出してパーティと戦わせるのではなく、モンスターに戦術を工夫させる、あるいはパーティに戦術を工夫させることで、プレイヤたちに考えさせ楽しませるのです。

シナリオに組み込む

この章では、シナリオに組み込むことができる戦術のパタンをご紹介します。最初のうちは、ダンジョンのすべての部屋に、こうした戦術的な要素をもたせる必要はありません。この中から 1 つか 2 つを選んで、シナリオの中のどこかの遭遇に当てはめてみてください。



多勢・無勢

狭い通路

SW2.0、AR2E では、狭い通路の場合、二人、あるいは 4 人までしか乱戦/エンゲージできない、ということにして狭い通路であることを表現します。

左の図では、パーティ(→)がこのまま進むと、先頭の一人で 3 人の敵(◎)を相手にしないといけないことになります。

この体制で 5 ラウンド戦闘すると、相手が 3 × 5 = 15 回攻撃してくるのに対し、パーティ側は 1 × 5 = 5 回しか攻撃できません。

 

司令塔

司令塔にあたるモンスターがいて、そのモンスターを早くに無力化できればパーティは戦いを有利に進めることができます。プレイヤたちには、そのモンスターが命令を出しているなど、司令塔であることを印象づけてください。

司令塔を排除した場合

司令塔のモンスターを排除できた場合は、残りのモンスターたちが手近なキャラクタを攻撃するようになったり、負傷すると逃げ出すようになったり、あるいはもっと直接的に攻撃の数値を下げたりして、パーティが有利になったことを表します。

 

撤退・追撃

劣勢になってた敵が撤退するとき、一般的には一方的に追撃できる大きなチャンスです。ただし、追撃を続けると移動速度の速いキャラクタと遅いキャラクタが離れてばらばらになり、支援が受けられず戦力が低下したり、魔法使いなどの弱いキャラクタが無防備になりやすいので一転してピンチになることもあります。

 

位置取り

パーティが部屋に入った時点での敵の配置は戦闘に大きく影響します。部屋の中でバラバラに散らばっているのか、かたまってパーティを待ち構えているのかによって、戦いの難易度は大きく変わります。

強めの敵を不利な位置取りで出してみる、あるいは弱めの敵を最善の位置取りで出してシナリオに組み入れてみてください。

 

奇襲

奇襲には、奇襲側が単に 1 回先に攻撃できるというだけでなく、事前に支援魔法などの準備ができる、相手の陣形が整っていないため接近戦能力が弱い魔法使いなどを先に叩ける、奇襲を受ける側は装備を身ににつけていない、といった大きな利点があります。

パーティが奇襲する

時にパーティは、モンスターを奇襲する機会に恵まれます。これは、パーティが音を立てずにうまく移動したことによって発生することもありますし、モンスターが寝ていたり、酒を飲んでカードゲームに興じているためパーティの接近に気づかない、といったモンスター側の油断によって発生するものもあります。

シナリオとして組み込むのは後者のパタンで、プレイヤたちが奇襲の機会をうまく活かしてモンスター側が体制を立て直す前に倒せるかどうかを試します。

パーティが奇襲される

反対に、パーティが奇襲される場合は、奇襲を察知できるかどうか、奇襲を受けてしまったらそこからいかに体制を立て直すかが、シナリオで試すポイントとなります。

 

戦場を選ぶ

自分たちに有利な戦場を選ぶのは戦術の基本です。

シナリオでは次のような遭遇状況を設定し、パーティが適切な戦場を選べるかどうかを試します。

 

弓矢

弓矢など射撃能力が高い側は障害物のない広い場所(敵が移動してくるのに時間のかかる場所)を選ぶべきですし、低い側は身を隠せるものがある場所、接近戦に持ち込めるだけ狭い場所で戦いたいでしょう。

奇襲される状況としては、

・部屋の入口で待ち伏せされる

・隠し扉などの仕掛けを使って奇襲する

・天井に張り付いていたモンスターが落ちてくる

・擬態能力や隠れ蓑能力が非常に高い、透明になっているモンスターが襲ってくる

などがあります。

 

足場・高低・広狭

自分たちの足場は良く敵の足場は悪い場所、敵が飛び回る場合は天井の低い場所、敵の移動能力が高い場合は狭い場所で、移動能力が低ければ広い場所で。

 

分断

敵より多い人数で攻撃するというのも戦術の基本です。

仮に、敵に数的な有利がある場合でも、うまく分断することで逆転することができます。反対に、パーティの数が優っていても分断されてしまうと窮地に陥る可能性があります。

 

広い部屋・長い通路

広い部屋を戦場にすると、移動能力の差やプレイヤの性格、接近戦能力の有無などで、戦闘中に自然とパーティがばらばらになってしまうことがあります。時には広い部屋を設定してプレイヤがこの戦術の基本に忠実な戦いを展開できるかどうか試してみてください。

 

強制的な分断

また、壁を作る魔法や扉を開かなくする魔法、落とし格子・落とし穴のような罠などで強制的に相手を分断できることもあります。

 

モンスター特有の戦術

モンスターはそれぞれ、特別な力を持っていることがあります。その場合は、その特別な力が発揮できるような戦術を考えてみましょう。

単に体が大きい、小さいというのも戦術に活かせる特別な力と言えます。体が大きければ広い部屋で、小さければ狭い場所を戦場にしてキャラクタたちを迎え撃ちます。

また水中を移動できる、壁をよじ登ることができるといった特殊な移動能力を持つモンスターであれば、水辺や歩きにくい床、ぬかるみなどで力を発揮できるでしょう。

視覚に頼らず音響定位(エコーロケーション)や振動感知などで獲物の位置を知るモンスターであれば、全くの暗闇では圧倒的な強さを誇るでしょう。

このように、モンスターの持つ特殊な能力と相性のいい地形を選んでそこに登場させます。

 

第10章 目的と動機

ダンジョンの構成要素の一つにわかりやすく「宝物」を挙げましたが、実はこれは「シナリオの目的」と言い換えることができます。「シナリオの目的」が「宝箱」の場合は、キャラクタたちは宝物を手に入れるためにダンジョンに入るということです。

しかし、ダンジョンに入る目的は宝物だけではありません。盗まれた形見を手に入れるでも、貴族の館から裏切りの証拠となる手紙をとってくることでも、さらわれたお姫様を救い出すことでも構いません。

あるいは、宝物に相当するものはなく、ダンジョン内の敵を殲滅する、邪悪な魔術師を倒す、防御施設を破壊する、備蓄されている兵糧を焼き払う、といった「シナリオの目的」を設定しても構いません。

 

シナリオへの影響

シナリオの目的が単なる宝物の入手から変わると、フレーバーが変わるだけでなく、キャラクタたちがとるべき戦術も変わるばあいがあります。むしろシナリオを作る場合には、そちらの影響の方がずっと重要になります。

例えば、敵の殲滅や邪悪な魔術師の退治が目的であれば、逃げられないよう工夫しなければなりません。人質を救出するのであれば、その命を盾に取られないよう、なるべく隠密裏に潜入しなければならないでしょう。裏切りの証拠となる手紙を手に入れたいのであれば、その目的を悟られないようにしないと燃やされ証拠隠滅を図られてしまうかもしれません。



目的のパタン

 

物を手に入れる

宝物や手紙などの「もの」を手に入れるのが目的です。

うまく忍び込んでモンスターを倒さず目的の物だけ手に入れても、目的は達成できたことになります。そのため、「うまくやれば危険を冒さず目的を達成できる」シナリオを作ることも出来ます。

注意すべき点としては、敵が目的の「もの」を持って逃げる可能性を考えておくことです。特に、怪我や魔法の消耗で一旦パーティがダンジョンから撤退した時、敵がその宝物を持って逃げ出したりしないか、もししないのであれば何故逃げないのかを考えておかなければなりません。

 

ダンジョンを占拠する

ダンジョンのモンスターを倒してダンジョンを占拠、あるいはダンジョン内から追い出すのが目的です。

この場合、目的はあくまでも占拠なので、モンスターが逃げ出したならそれでも構いません。

 

モンスターを掃討する

ダンジョンに巣食っているモンスターを倒します。

占拠とは異なり、モンスターを逃してはダメです。あるいは、ボスなどの特定のモンスターは逃がしてはなりません。

 

モンスターを捕らえる

モンスターを生きたまま捕まえ、依頼者の元まで連れて帰ります。捕まえる対象は単なる怪物ではなく、重要な情報を握っている敵の将軍だったり、裁判に掛ける必要のある貴族だったり、賞金首で生きたまま連れて行く必要がある盗賊だったりします。

 

ダンジョンを突破する

ダンジョンは、パーティが先に進むために突破しなければいけない障害となっています。パーティはダンジョンの宝を手に入れる必要も、中に巣食っているモンスターを倒す必要もありません。入口から入り、出口から出る。それだけです。

ただし、プレイヤたちは戦闘が大好きで、避けられる危険にも喜んで首を突っ込みがちだという性質は忘れないで下さい。

「戦力の 2/3 以上を失った場合」など、モンスターが逃げ出す条件、あるいは逃げ出さない理由を考えておきます。逃げ出さない場合、そのことをパーティに教えるかどうかでプレイヤたちが取る戦術やシナリオの難易度が変わります。当然、教えた場合のほうが大胆に休息や一時撤退ができるので、シナリオは簡単になります。

 

人質を奪還する

ダンジョン内に囚われている人質を救出します。

人質を確保する前に、パーティが人質の奪還に来たことを知られた場合に、人質を盾に取られないか、取られないならその理由を考えておきます。多くの場合、人質を盾に取られるとパーティの打つ手はなくなり、セッションは泥沼に入りがちですので、マスターとしても避けたいところです。

人質を盾に取られた時点でパーティの負け、とシナリオを定義してもいいですし、人質を確保するまでは比較的簡単で、連れて逃げ出すのが難しい、というシナリオにしてもいいでしょう。

 

情報を手に入れる

ダンジョンの地図や特定の部屋の様子、ダンジョンの支配者の情報、敵戦力の情報などを持ち帰るのが目的です。

パーティの行動、特に戦闘行動に制約がかかる可能性が高いため、上級者向けの目的になります。慣れないうちはあまりお勧めしません。

 

ダンジョンに行く動機

最初に作ったダンジョンでは、パーティは宝物を求めてダンジョンに行ったことにしていました。しかしキャラクタたちがダンジョンに行く理由・動機はそれだけではありません。

 

宝探し

一番単純な理由で、宝物を探しにダンジョンに向かいます。途中でやめて引き返すのもキャラクタたちの自己責任の範疇で行えます。その目的もほぼ、「物を手に入れる」に限られます。

宝物は言ってみればプレイヤたちに対するエサです。何故エサになるかというと宝物を持ち帰ればその金でより優秀な装備を手に入れて、キャラクタはより強く、より活躍できるようにできるからです。そのため、コンベンションなど「そのキャラクタでは1回しか遊ばない」という前提の環境では、「宝探し」はプレイヤにとっての動機付けとしてやや弱くなります。

 

依頼

誰かの依頼を受けてダンジョンに向かいます。「目的」はどれでもありえます。

この場合、ダンジョンに関する情報を依頼者から伝えることも出来ます。もしパーティに事前の情報を生かしてダンジョンをクリアして欲しいと考えるのであれば、「依頼」のパタンにして、依頼を受けると自動的にダンジョンの情報を教えるとよいでしょう。

また、依頼人の都合で目的達成までの期間を自由に設定できるのもこのパタンの利点です。

 

目的達成の手段

パーティあるいは特定のキャラクタの内発的な動機でダンジョンに向かいます。例えば、友人が攫われ閉じ込められているので救出に向かう、より強力な魔法を手に入れるため古代の呪文書があると言われる塔へ向かう、追手から逃れて隣国へ脱出するため危険な廃鉱を突破する、政敵を追い落とすため違法行為の証拠となる帳簿を盗み出す、といった具合です。

この場合も、「目的」はどれでもありえます。

一部の TRPG で取り入れられている「ハンドアウト」という仕組みを使うと、このタイプの理由でダンジョンに向かわせるのが楽です。

 

第11章 モンスターの反応

ダンジョンのモンスターが年中その部屋にとどまって動かない、という保証はどこにもありません。

一部のアンデッドモンスターやゴーレムのように創造者の命令に忠実に従うモンスターであればともかく、ほとんどのモンスターは外に出ていくこともあるでしょうし、時間によって部屋 A と部屋 B を行ったり来たりしているかもしれません。また隣の部屋で物騒な物音(武器と武器がぶつかるような音)がすれば様子を見に行ったり警戒してやってくるのを待ち伏せるのが普通でしょう。

 

独立性を低くする

このように、パーティの行動によってモンスターの行動を変えるとシナリオを取り回すのは難しくなります。本書のはじめに解説した独立性の低いシナリオになってしまうからです。

そのため、慣れないうちはモンスターの動く範囲をごく狭いものにとどめておきましょう。パーティに反応して動くのは知能の高いボスだけにする、あるいは動く範囲を限定して自分の部屋と通路までとする、増援としてやってくるモンスターを一種類に限定する、などです。

しかし、独立性を低くすることは悪い面だけでなくいい面もあります。パーティの動きにモンスターを反応させることで、プレイヤたちにはより高度な判断を求めることができます。

慣れないプレイヤが相手の場合は、そこまで考えさせるのは無理かもしれませんので、この章の内容は組み入れないほうが無難です。一方、熟練プレイヤが相手の場合は、キャラクタの行動でモンスターが動くとなると、実際には大した動きをしないとしても、勝手に深読みして勝手に楽しんでくれることがありますので、ぜひ一度、シナリオに組み入れてみてください。



モンスターの反応

 

迎撃する

モンスターがパーティの存在に気づくと、迎撃の体制を取ります。

装備を身につけ武器を構え、姿を隠して奇襲を狙い、支援魔法をかけて強化する、などの行動を取ります。

 

徘徊する

モンスターは特定の時間あるいは一定の確率でダンジョン内を移動します。それは見回りだったり、餌を探してのことだったり、退屈しのぎだったりと様々です。

徘徊するモンスターは、パーティにとってチャンスにも成り得ます。部屋にいる時より少人数だったり、軽装だったりするからです。

ゲームマスターは徘徊に関する情報をパーティに事前に与え、パーティの戦術に組み入れて作戦を立てるよう促してもいいでしょう。

 

応援を要請する

パーティに気づいた、あるいは襲撃を受けたモンスターは、他の場所にいるモンスターに警告を出したり応援を要請したりします。わかりやすく、腰にラッパをぶら下げている、などの描写をするといいかも知れません。

このようにモンスターが動くダンジョンは非常に厄介で難易度が高くなります(パーティにとっても、ゲームマスターにとっても)。

敵が集まって数が増えれば、それを撃破することは一段難しくなります。敵が十分に賢ければ、援軍が到着するまでは防御に徹し、援軍が到着した時点で反撃に出るでしょう。

更に厄介なのは、シナリオの目的が人質救出だった場合に人質を盾に取られたり、宝物の入手だった場合に宝物を持って脱出してしまうような敵の場合です。

 

逃げる

パーティの襲撃を受けると逃げ出します。

ダンジョン自体から逃げ出してしまう場合と、後方にいる味方と合流し態勢を立て直すために逃げる場合があります。後者の場合は応援を呼ばれるのと同様の結果になります。

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